私が研修医の時は、
矯正の技術を習得するために、
手の豆を何度も潰しながら、
バケツがいっぱいになるまで針金を曲げる練習を行ったものでした。
(いきなりの昔話ですいません💦
ちょっとガマンしてください😅)
矯正歯科医を目指す上でまず第一のハードルは、
このワイヤーを曲げることにあります。
ドクターが曲げたワイヤー通りに、歯が並ぶわけですから、
極めて精密な調整が必要なのです。
実際、私の同級生も、
あのワイヤー曲げが嫌だからという理由で
矯正をあきらめたりしていました。
ところが、近年、ストレートワイヤーテクニックという、
あまりワイヤーを曲げずに矯正治療を行うテクニックが生まれ、
さらに、最近、急速に普及しているマウスピース型矯正装置では、
そのようなワイヤー技術を全く必要とせずに
矯正治療が行えるようになってきました。
そのため、
十分な研修を受けていない歯科医師による矯正治療や、
それどころか、
歯科医師を介さずに矯正治療を行うサービスまで生まれました。
しかし、
その技術力がいらないはずのマウスピース型矯正装置で、
トラブルが続出し大変な問題となっています。
私は、その大きな原因は2つあると考えています。
それは診断力と対応力です。
矯正診断には、
まずセファログラムという横顔のレントゲン写真を分析します。
矯正治療にはこれが無いとお話しにならないのですが、
実はこのレントゲン分析には特殊な訓練が要ります。
ワイヤー曲げに続く、
矯正を学ぶ第2のハードルと言えるかもしれません。
研修では、それこそ何十枚、何百枚と分析を行って
技術を習得していくのです。
(最近この分野のAI技術が非常に素晴らしいのですが、また後日お話しします。)
矯正診断では、このレントゲン分析に加え、
模型の分析や写真、
最近では、CTやMRIを駆使して
総合的に治療計画を立てていくのです。
そしてこの診断力なのですが、
これこそ経験が必要不可欠ですので、
ベテランであればあるほど高くなる傾向がある
と言われております。
私も矯正医として20年近くになりますが、
先輩、大御所の先生からすればまだまだひよっこ扱いで、
いまだに師事を仰ぐこともあります😅。
もう一つの対応力も同様のことが言えます。
人の身体はそれぞれで、
長い治療計画の間に、
最初のシミュレーションや計画どおりに進まないということは
そう珍しいことではありません。
その対応方法は実に様々で、
その多くは教科書には載っていない治療になります。
つまり、経験が重要で、
かつ対応する引き出しの多さが重要となります。
そして、その引き出しの大事な一つが、ワイヤー矯正の技術なのです。
私たちはたくさんの方のお口を拝見してきましたが、
これまで一つとして同じ歯並びを見たことはありません。
(余談ですが、私たちは、お口の写真だけで、これは誰々さんのお口の中だとすぐに判断できます😆)
もちろん、顎骨やお顔もそれぞれ全く違います。
矯正歯科は、歯科治療の中でも、
もっとも長い研修期間を必要とする分野の一つです。
大学病院あるあるですが、
深夜一番遅くまで電気がついているのは大体、矯正科だと
よく言われています。
実際、私も深夜2時まで医局に残り、
診断や分析を行い、
次の日朝9時に出勤するという生活を
5年間続けました。
あっ、また昔話ですいません😆!
つまり、6年間、大学で歯学全般を学んだ後、
1から2年の臨床研修を行い、
さらに最低で5年以上の矯正歯科を専攻し、
そこで初めて認定医を受験する資格が得られます。
矯正歯科の世界では、その認定医の試験を合格して初めて、
ようやく一人前の矯正医としてスタートラインに立てたねと言われる、
そんな分野なのです。
本日のブログのポイント
マウスピース型矯正装置で失敗しないためには、その①
・診断力&対応力があるドクターを選ぶこと
・矯正治療の研修を受けた専門医がオススメ
・認定医はひとつの基準
となります。
これから、矯正治療をお考えの方はご参考にされてみてください。