最近、”矯正”の検索で関連ワードとして、”失敗”や”後悔”のワードが急上昇しているそうです。
実際、先日の日本矯正歯科学会でも、
『矯正治療に伴うトラブルが急増どころか激増している』という話がありました。
そこで、矯正治療を失敗しないためのお話を、シリーズでさせていただければと思います。
今回は、ここ数年、私たち矯正歯科医の間で、急上昇ワードとなっている
”ボーンハウジング”について説明したいと思います。
これは、一言で言うと、顎の骨の中に歯の歯根を収める、と言うことです。
つまり、矯正治療で歯を移動する時は、歯の根っこは骨の中におさまる範囲内で行いましょう
と言うことなのですが、
そんなの当たり前じゃん、と思いますよね。
そうです、
当たり前のことなのですが、ある装置の出現で、
それがそうでもないと言うことに気付かされるようになったのです。
それはCTです。
C T自体は、昔からあったのですが、一般の歯科医院にも開発され発売されたのもここ10年くらいの話です。
当初は、歯科にCTなんて必要なの?と言われておりましたが、今ではインプラント治療をする際は必須検査と言われる位になりました。
それから少し遅れて、矯正治療でも必要ということが、最近になってようやく普及され始めています。
通常、矯正検査では、まずこのようなレントゲン写真を撮ります。
このお口全体を写したレントゲン写真では、歯の横の骨の状態は観察できますが、前後の骨は分かりません。
次に矯正特有のレントゲン検査として側方セファログラムという写真を撮ります。
このレントゲンでは、前歯の部分の骨の厚みがわかります。
この患者さんは、骨の厚みに問題はなさそうですね。
従来は、これに歯の模型と写真を合わせて、矯正の最低限必要な基本検査として、診断を行なっていました。
最近ではこれにCT検査を加えます。
これを見ると、歯の根っこが骨から飛び出しているように部分があります。
このような歯を外側に拡大してしまうと、危険なことがわかります。
私が研修医の頃は、このようなCTは無かったので(医局ではまさに開発中でした)、先輩からはよく歯肉を指で触れ、と言われました。
つまり、触診によって骨の状態を把握しようとしていたのです(今でも大事な検査方法です)。
この触診と2次元のレントゲン写真から、まさに経験と勘で治療していたわけですね。
それがCTだと一目瞭然です。
この患者さんを”ボーンハウジング”を意識して治療を行うとこのようになります。
歯の根っこが、骨の中に収まりつつあるのがわかりますでしょうか?
このようにボーンハウジングを意識して治療を行うと、
歯肉退縮(歯茎が下がる)や
歯根吸収(歯の根っこが短くなる)
といった偶発症を避け、
安定した後戻りのしにくい歯列がえらるよようになります。
安全な矯正治療を受けるためには、上記に見てきたようにCTの利活用が重要なポイントとなってまいります。
これから矯正歯科治療をご検討の患者様は、クリニックのホームページなどでCT設備が整っているか?なども
気にされてみてください。