矯正治療には、大きく2つの目標があります。
1つは、見た目(審美)です。
もう一つの目標は、かみ合わせです。
矯正治療では、この2つ、どちらが欠けてもいけません。
矯正と審美についてはまた別の回にさせて頂いて、
今回は、矯正とかみ合わせについてお話しできればと思います。
最近、他院で矯正治療を受けた患者様からの矯正相談で、歯並びは綺麗になったけど、
奥歯がかめなくなったという問い合わせが増えています。
もちろん原因はいろいろ考えられますが、
そのような問い合わせが増えている背景には、
ずばり、マウスピース型矯正装置があります。
マウスピース型矯正装置を行うことによって、
奥歯の上下の間にすき間ができてしっかりかめないという症状がとても増えているのです。
専門的には、臼歯部開咬といいます。
原因は様々言われておりますが、
マウスピース型矯正装置では、比較的頻繁に起こる特有の現象と言って良さそうです。
実は最近、そのヒントとなるような論文が発表されました。
https://www.ajodo.org/article/S0889-5406(22)00130-5/fulltext
マウスピース型矯正装置による臼歯の圧下について調べた研究です。
つまり、マウスピース型矯正装置によって、奥歯が沈みこんでいるのではないかというのです。
この論文の結論の要約は以下の通りです。
1. 計画外の臼歯部圧下は0.94mmで74.2%の患者に認められた。
2. 上顎臼歯部のみの圧下は15.5%,下顎臼歯部のみの圧下は32.8%であった.
また,25.9%の症例では,上下顎臼歯部の圧下が認められた.
3. 臼歯部侵入と治療期間との間に相関は認められなかった.
このような結果はある程度予測していましたが、
その量は想像以上でした。
奥歯が1mm近く沈んでしまったら、奥歯が噛まなくなってしまうのは当然です。
もちろん、私たち歯科医師は、そんなことにならないように、細心の注意を払い、治療を進めていきます。
そして、万が一、このような現象が起こってしまっても
必ず奥歯がしっかりとかめるように仕上げていく責任があると思います。
当院では、矯正治療終了時には、以下のようなかみ合わせのチェックを行います。
具体的には、厚さ8ミクロンのフォイルを使って引き抜き検査を行います。
動画にあるように、臼歯部では抜けず、前歯部のみでぎりぎり引き抜けることが理想と言われています。
ぜひ、かみ合わせチェックの参考にしてみてください。