こんにちは、院長の間所です。
昨日は、東京矯正歯科学会というところが主催するセミナーに参加してきました。
テーマはずばり、親知らずについてです。
矯正治療では、矯正後の後戻りの原因となるため、親知らずを抜いてもらうことが一般的です。
また、患者さんから「親知らずが押してきたから歯並びが悪くなってきた」と相談を受けることもよくあります。
ところが、実は、親知らずが歯並びを悪くするという科学的根拠はありません。
それどころか、複数の論文で親知らずは歯並びに悪い影響を与えないと発表されており、海外では症状がない親知らずは、抜いてはいけないというガイドラインが示されています。また、最近では、医療費の無駄遣いだとまで指摘されるようにもなってきました。
ただし、これらの海外論文やガイドラインをそのまま適用するのは、人種間の骨格差などもあるので十分な吟味が必要です。
このように、科学的根拠と実際の臨床と合わないということはよくあります。この辺りについてはまた、改めて詳しく話させて頂ければと思います。
今回のセミナーもこのような背景に加えて、最近は歯の移植や矯正用インプラントなど診療技術の向上により親知らずの有用性が増したため、セミナーのテーマに選ばれれたワケです。
表題の、歯並びのために親知らずを抜く必要はないのかという疑問についてですが、症状による、というつまらない結論にはなりますが、従来ほどその必要性が減ってるのは間違いないと思います。
私が研修医の頃は、症例発表で親知らずを抜歯していない矯正治療後のレントゲン写真を提示すると、”なんで抜いていないんだ?!”と突っ込まれるのが普通でした。最近は、抜歯されていないレントゲン写真を見せても、”今後患者さんと相談して抜く予定です”とお茶をにごす?!ような言い方をするのをよく見かけます。
また、比較的固定観念の少ないと思われる若い矯正の先生ほど、親知らずの抜歯を依頼しないというデータもあり、興味深いところがあります。
最新の情報収集を怠らない、古い固定観念に縛られすぎないよう気をつける、エビデンスの適用は十分に吟味する、これが私の今回の教訓です😅
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24883415
https://jp.dental-tribune.com/news/豪州:不要な親知らず抜歯に数億ドル/
http://www.kokuhoken.or.jp/tos/file/seminar/seminar_2019_au.pdf